レビュー:モートラック2008 ザ・ファースト・ドロップ ~ウィスキー誕生前夜~

MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)を飲んだ。熟成していないで点数はつけず。
このウィスキーはいわゆる「ニューポット」というやつだ。ニューポットとは、樽に入れて熟成させる前のウィスキー。だから、液体はいつものあの琥珀色ではなく、透明だ。樽で熟成させてはじめてウィスキーと呼べるのだけれども、このニューポットは逆に「ウィスキー誕生前夜」を知ることが出来る通なアイテムといえる。(特にモートラックは「ジョニー・ウォーカー」の原酒として知られる)さて、ウィスキー誕生前夜の香りと味やいかに。




【評価】
香りは、麦の甘みと酸味。温度でいうなら“ぬる目”。麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、同時に旨みより酸味が強いため、全体の香りのバランスは荒々しい。
恐る恐る口に含めば、強烈な麦の香りの主張。後味は穏やかな味わい。オイリーさ、粋なアルコール、ムンムンとした少し暑い日の麦畑。
ウィスキー好きのための麦の酒。(これが樽で熟成されてウィスキーとなるのだ)

【Kawasaki Point】
-point
※ニューポットは熟成させていないので、点数はつけない。

【基本データ】
銘柄:MORTLACH The First Drop 2008(モートラック ザ・ファースト・ドロップ 2008)
地域:Highland, ハイランド
樽:-
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

色は無色透明
麦を感じる部分は穏やかでロマンティックだが、
同時に旨みより酸味が強い

モートラック蒸留所の位置を地図で確かめてほしい。モートラックはゲール語で「お椀状のくぼ地」の意味。

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レビュー:アードベッグ ガリレオ 宇宙熟成記念ボトル

アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)を飲んだ。86点。
アードベッグがNASAのプロジェクトに協力したことがきっかけの、限定ボトル。だから名前が「ガリレオ」。別にこのウィスキーが宇宙で熟成されたわけじゃないが、そういう実験はしていて、「宇宙での熟成」がテーマらしい。そしてその実験にアードベッグの原酒が使われているとのこと。
尚、ウィスキー・マガジン社主宰のWWA(ワールド・ウィスキー・アワード)の2013年の、「ワールド・ベスト・シングルモルトウイスキー」に選ばれている。

名前が「ガリレオ」で、宇宙にウィスキーを送り出した記念ボトル・・・それだけ聞くと、敬遠しがちだが、さすがはラムズデン博士(アードベッグの責任者)。しっかりと仕上げてくる。
一瞬で売り切れたので、ほとんどの酒屋さんで今はもう在庫切れのはずだ。この3月に発表された2013のWWAの受賞ニュースの後でこのボトルが残っているバーがあれば、そこそこ貴重かもしれない。

アイラ島から飛び立っている・・

【評価】
グラスに鼻を近づければ、香りの高音部分のなめらかさと、花の蜜、海の潮。低音部分には、木の素朴さがある。香りだけでうっとりしすぎず、「飲んでみなよ」と誘われる感じ。
グラスを傾け唇から少量、流し込めば、口の中でピートが暴れるが、花の蜜がそれを覆う。花の蜜はピートを覆いはするが、密着はしない。その後味は美しく、ピートと蜜がそれぞれのメロディで、まるで対位法のように奏でられる。
煙の奥のアルコールが美しさをまとったウィスキーである。

【Kawasaki Point】
86point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:アードベッグ ガリレオ(ARDBEG GALILEO)
地域:ISLAY, アイラ島
樽:Oak, Burbon, Marsala Wine,  オーク、バーボン樽、マルサラワイン樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル



ワンちゃんも宇宙へ!
このあたりのユーモアが効いている

銀の箔押しのGALILEO(ガリレオ)

ゴールドに輝く色


宇宙に旅立った世界初のウィスキーをつくった蒸留所といえば?もちろん答えはアードベッグ。
そのアードベッグ蒸留所の位置を地図で確認してみて。

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レビュー:ストラスアイラ 12年 初心者も飲みやすいウィスキー

STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)を飲んだ。80点。
ストラスアイラといえば、有名な「シーバスリーガル」に使用されている。シーバスリーガルのキー・モルトだ。「キー・モルト」とは、そのウィスキーを構成する“主要なウィスキー”のこと。野球でいえば4番だし、サッカーでいえばエースストライカー、チェスでいえばキングといったところだ。
このストラスアイラを「初心者の方にもおすすめできるシングル・モルト」という声もある。まるでリンゴのような華やかな香りと味がするからだ。

ストラスアイラはシーバスリーガルのキー・モルトだ。

【評価】
グラスから立ち上る香りは、リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴。
グラスを傾け口に少量含めば、樽の木の香りが華やぐ。樽の上に乗せられたリンゴ。滑らかでオイリー。
生チョコが合うウィスキー。

やや加水すると・・・ (まったく初めて飲む方は少し水を足してアルコールの刺激を消すといい)
香りは、さらにリンゴ。かじりたてである。種類はサンフジ。
飲むと、シェリー樽の香り、穏やかに入ってくるが、ぼやっと広がりすぎず、味のコンセプトは絞ってあるのが分かる。

さらに加水すると・・・
香りは、リンゴ飴。スパイス、シナモン。
飲めば、落ち着いた木の香り。その木にはリンゴの蜜が擦り付けてある。

【Kawasaki Point】
80point

【基本データ】
銘柄:STRATHISLA 12yo(ストラスアイラ 12年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー樽
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

リンゴの蜜と酸味、アルコール刺激、ハチミツを2~3滴

ストラスアイラ蒸留所は1786操業。かなり古い部類。

ストラスアイラは、「アイラ川の広い谷間」を意味する。よくある「グレン~」のグレンよりもストラスは広い谷という意味らしい。この酒がどこで生まれたか場所をぜひ地図でも確かめてみて。

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レビュー:ダグラスレイン バルブレア17年 香りの素晴らしさは・・

Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)を飲んだ。66点。
スコッチ・ウィスキー映画『天使の分け前』にも登場するというので、バルブレアを飲んでみた。ダグラスレイン社というボトラーの17年。(ボトラーズボトルとは何かはこの記事に詳しい

バルブレア17年 ダグラスレイン社

【評価】
グラスに鼻を近づければ、麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き。若い木の木材。麦の甘みと主張。不思議なまとまり。すっぱすぎない。
口に含めば、アルコールの熱さと木のえぐみ、麦の酸味。スッと引いていくが、それだけで終わる。えぐみが後味。
香りの素晴らしさは特筆に値するウィスキー。

【Kawasaki Point】
66point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Douglas Laing Old Malt Cask BALBLAIR 17yo (ダグラスレイン社 オールド・モルト・カスク シリーズ バルブレア 17年熟成)
地域:Highlanda, ハイランド
樽:Oak, Sherry,  オーク、シェリー
ボトル:Douglas Laing, ダグラスレイン社

麦の酸味があるのに爽やかな木の落ち着き

シェリー樽の割りに明るい色
香りは特筆に価する


スコットランドでもかなり古い蒸留所のひとつと言われるバルブレア蒸留所の位置を地図で確かめてみて。

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レビュー:カリラ15年 80年代 熱く、端正で、馥郁たる・・

Caol iLa 15yo '80s(カリラ 1980年代 15年熟成)を飲んだ。84点。
いわゆるオールドボトルである。オールドボトルって旨いんですか?という質問がある。これは難しい質問だ。一般的に言って、オールドボトルは香味の点では新しいものに比べて不利である。保存状態によりその味わいは大きく異なるからだ。しかし「今はもうない香味」がそこにある限り、味わってみたいという魅力は尽きない。

80年代のカリラ

【評価】
グラスに鼻を近づければ、華やかな奥にほんのり焦がした麦の酸味、少し鼻に突撃するアルコール、主張があるのにふくよか。したがって奥行きがある。
口に含めば、熱く主張するアルコールに、焦がし麦の香りがすぐに追っかけてくる。熱く、端正で、馥郁たる後味のバックボーンがある。ピーティさは消えていないが、溶かされて、ほかの香りと融合している。
麦と馥郁たる香りのウィスキー。

【Kawasaki Point】
84point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:Caol iLa 15yo '80s(カリラ 1980年代 15年熟成)
地域:Islay, アイラ
樽:Oak, Bourbon,  オーク、バーボン
ボトル:Distillery Bottle, オフィシャルボトル

「今はもうない香味」がそこにある限り

主張があるのにふくよか。したがって奥行きがある。

麦と馥郁たる香りのウィスキー


イギリスはアイラ島のカリラ蒸留所。カリラという言葉は海峡のことを指している。

予告:レポート:余市蒸留所

先日、余市蒸留所を見学し、ウィスキー作りの現場と、日本のウィスキーの父、竹鶴政孝の住まいに触れてきた。わざわざ、ウィスキーアンバサダーの箕輪さん、ウィスキーアドバイザーの小原さんにご案内いただき、現工場長の杉本さん(前マスターブレンダー)にもご挨拶し、お話を伺うことができた。
近々、レポートをUPする予定である。

貴賓室から余市蒸留所を見る。一般には非公開の貴重な体験だった。

蒸留所は素晴らしいが、現実的にすべての人が訪問できるわけではない。
このブログでの蒸留所レポートが、「行きたいがすぐには行けない」という人にとって有益な情報源となれば幸いである。楽しみにしていてほしい。