レビュー:カリラ 2010 6yo Douglas Laing's 刺すような煙!

Douglas Laing's Provenance Caol ila 2010 6yo(ダグラスレインのプロヴェナンス シリーズ カリラ 2010年蒸留 6年熟成)を飲んだ。89点。

カリラはスコットランド本島の西、アイラ島にある蒸留所のひとつだ。このボトルは、毎年5月に開かれるアイラフェスティバル(音楽とモルトの祭典!)向けにリリースされた1本だ。
どのような香味だろうか。

ダグラスレイン カリラ 1990 6yo

【評価】
グラスから立ち上るのは、刺すような煙!煙!だが、味わいたくなる。クレイジーな柑橘。
口に含めば、意外とあっさり入ってくる。スローモーションで展開していく煙。
ああ、すごい。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:Caol ila 2010 6yo(カリラ 2010年蒸留 6年熟成)
地域:Islay, アイラ島
樽: Bourbon (バーボン樽)
ボトル:Douglas Laing's ダグラスレイン

フェスティバルっぽいデザイン・・・?

4月にボトリング、5月にリリース

クレイジーな柑橘

スローモーションで展開していく煙
フェス向けの個性あるボトルだった



レビュー:リトルミル 1991 19yo Cadenhead's まるでゴツゴツした崖を・・・

CADENHEAD'SのLITTLEMILL 1991 19yo(ケイデンヘッドのリトルミル 1991年蒸留 19年熟成)を飲んだ。78点。

ケイデンヘッドといえば、スコットランド最古のボトラーとか、カクカクした無骨な瓶の形とかのイメージがあるかもしれない。少し前は一般的ななで肩ボトルだったようだ。(参考:ボトラーズとは?

リトルミルといえば、イギリスのスコットランドはローランド地方の閉鎖系蒸留所だ。閉鎖して、再開して、また閉鎖して・・・また復活する?そんな噂もあるが、もはやどっちでもいいだろう。このローランドという地方では、そんな閉鎖系蒸留所が多くて、やや切ない気持ち、郷愁にかられる・・・そんな思いを抱くウィスキー好きが多いかもしれない。

このボトルは、どのような香味だろうか?

リトルミル 1991 19yo

【評価】
グラスから立ち上る香りは、納品されたばかりの木の家のカタログの山。青リンゴ。機械オイル。裸電球。コイル。
口に含む。ばね仕掛けのおもちゃがあちこちに飛んでいく。厚みのある段ボール。青リンゴの痕。
まるでゴツゴツした崖を思わせるウィスキー。

【Kawasaki Point】
78point

【基本データ】
銘柄:LITTLEMILL 1991 19yo (リトルミル 1991年蒸留 19年熟成)
地域:Lowland, ローランド
樽: Bourbon (バーボン樽)
ボトル:CADENHEAD'S ケイデンヘッド


縦に「LITTLEMILL」と書かれたラベル

ボトルについているテイスティングノート

青リンゴ。機械オイル。裸電球。

ゴツゴツした崖を思わせる




レビュー:クライヌリッシュ 1997 18yo G&M どんな激流の日々でも・・・

Gordon & MacphailのExclusive label CLYNELISH 1997 19yo(ゴードンマクファイルのエクスクルーシブラベルのクライヌリッシュ 1997年蒸留 19年熟成)を飲んだ。88点。

ゴードンマクファイルはよく、G&MとかGMとかいわれる。ドルチェ&ガッバーナのように、ドルガバ的な略し方は聞いたことがない。

クライヌリッシュ 1997 18yo G&M

【評価】
その香りは、何層ものベールに覆われているが、一枚ずつのベールを剥いでいく楽しみを与える。いちごのパイだろうか、洋ナシのタルトだろうか、パッションフルーツの種だろうか。その層は重みではなく、柔らかさである。
グラスを傾け、液体をほんの少し口に含めば、飴色に輝く手に馴染むパイプ。重厚なスピーカーから流れるピアノとウッドベース。フルーツが置いてある木のカウンター。
どんな激流の日々でも、ゆったりとした時を思い起こさせる力を持ったウィスキー。

【Kawasaki Point】
88point
※この点数の意味は?

【基本データ】
銘柄:CLYNELISH 1997 19yo (クライヌリッシュ 1997 19年熟成)
地域:Highland, ハイランド
樽: Bourbon barrel (バーボン樽)
ボトル:Gordon & Macphail ゴードン&マクファイル


ボトルのなで肩にはG&Mの文字

シカのトレードマーク

1997蒸留 - 2016瓶詰 樽番号6489


ピアノとウッドベース・・・



ある時代と、ウィスキー

とある国のとある街のとあるバーにて


「どうしてこうも変わっちゃったもんかねぇ」
とバーテンダーはグラスを拭きながらつぶやきました。
「近頃じゃウィスキーはみんなお金持ちの酒になっちゃったよ」
常連はみんなだまってうんうん頷いていました。


バーテンダーが続けて「昔はウィスキーをワンショットで出したもんだ」と言うと、若いお客さんは驚いたような笑顔になりました。
それを見た常連のひとりは「ダブルなんて言葉もあったな」と困ったような笑顔で返しました。

オーセンティックな木目のカウンターでは、お客さんはみんな小さなスポイトに溜まったウィスキーを、内側にたくさんの透明な突起のついた小さなグラスに向けて、高いところからポツリポツリと垂らしては、急いでその香りをかいでいます。

若いお客さんが
「僕知ってますよ。むかし、ウィスキーは飲み物だったんでしょう?」
と言いました。

「あの頃はまだたくさん作れてたからな」
と中年のお客さんが返します。

「でもあの頃のウィスキーは全部ちゃんと、銀行の金庫の中で眠ってるよ」
と説明を始めました。

「はい、地域と年代と熟成年数で基本的な価値が決まるんですよね?」

「もちろんそうだけど、どこかのバカな金持ちがこれを飲んじゃうと価値が上がってしまうんだ。あんな貴重なもんを飲むなんてバカだよな。で、銀行のウィスキーのボトルの値段が上がると、俺たちのスポイト一本の値段も変動するから困ったもんだ」

「それって連動してるんですか?」

「そりゃそうさ。どのバーも過去のボトルを担保にしてスポイトの仕入れをしなきゃいけないんだから。銀行の金庫にあるボトルの全体数が減ると、バーへのスポイト渋りがおこるからな」

「へぇー、なんだかよくわかりませんね」

「ま、難しい話で実は俺もよく知らない。でもな、ここのバーはすごいんだぞ。銀行にボトル担保を2本も入れてるらしい」

「え!2本も?」

「…しかも90年代って話だ」

「え?1990ですか?一体何者なんですか…」


バーテンダーは、少し離れたところでニコニコしながら話を聞いていました。

バーのいたるとこに雰囲気良く置かれたディスプレイには、海の底に沈んでしまったウィスキーの蒸留機の映像が映し出されています。

「もしそのボトルのウィスキーを飲んじゃったらどんな味がするんですかね?」

「そうだなぁ、考えたこともなかったが…ありがたすぎて味がしねえんじゃねえの?」

「ですよね。ボトルのウィスキーは飲むもんじゃないですよね。ちゃんと金庫におさめておかないと」



これはとある時代のとある街のとあるバーのお話。