レビュー:Glen Grant 1992 24yo 秋の透明な空気に・・・

Glen Grant 1992 24yo from SMWS 9.119(スコッチモルトウィスキーソサエティの9.119、グレングラント1992年蒸留 24年熟成)を飲んだ。89点。

通称「ソサエティ」からのリリース。ラスト1年を赤ワイン樽で熟成したグラントだ。グラントは比較的スッキリした味わいなので、変化が付いているだろうか。さあ、どんな味わいだろう?






【評価】
グラスを鼻に近づける。日曜の午後に湖に浮かべたボート。秋のキャンプは焚き火を。丸太に腰掛け塩おにぎりを。
口に含む。おお、具は塩昆布の香り。秋の透明な空気に、オレンジ色の光線がやわらかく溶け込む。
遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。少し肌寒い夕暮れの味。
丸太に腰をおろし、その子の頭を撫でる。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:Glen Grant (グレングラント)
地域:Highland(ハイランド)
樽: Bourbon & 1st fill red wine(バーボンと赤ワイン樽フィニッシュ)
ボトル:SMWS(ソサエティ)














レビュー:カリラ 1997 22年 あかあかと燃え上がる・・・

Call ila 1997 22yo for FEIS ILE 2019(カリラ1997年蒸留 22年熟成 アイラフェス2019向けリリース)を飲んだ。86点。
カリラの20年オーバーがちょっとずつ珍しくなってきた。アイラ島で毎年開かれるウィスキーの祭典、アイラフェス。どの蒸溜所もこのお祭り向けにオリジナルボトルをリリースする。



【評価】
グラスを鼻に近づける。香りが鼻腔までとどくと・・・一日中焚き火して今は夜。あたりに黒い炭が散らばる。あかあかと燃え上がる炎。しんとした夜にパチパチと大きな音を立てる。
グラスの液体を口に含む。ライムジュースを飲むそばで、角砂糖を口に含む子ども。小さな瞳に炎がキラキラと映る。
丸太に腰をおろし、その子の頭を撫でる。

【Kawasaki Point】
86point

【基本データ】
銘柄:Call ila (カリラ)
地域:Islay(アイラ島)
樽: Bourbon (バーボン)
ボトル:Distillery Bottle(オフィシャル)













レビュー:ベンリネス 20年 夏のしぼりたての・・・

Benriness 20yo by CADENHEAD(ケイデンヘッドからリリースされたベンリネス20年熟成)を飲んだ。89点。

ウィスキーに季節があるなら、これは夏だろうか。



【評価】
グラスから立ち上る香りは、夏のしぼりたてのきんかん、ぽんかん。風鈴の音が聞こえ、入道雲がもくもくしてる。
口に含む。木で作った小さな船、小川にサラサラ流す。柑橘を氷の張った冷たい水に放りこむ。
このウィスキーは、花火でも見ながら飲みたい。

【Kawasaki Point】
89point

【基本データ】
銘柄:Benriness(ベンリネス)
地域:Highland(ハイランド)
樽: Bourbon (バーボン)
ボトル:CADENHEAD (ケイデンヘッド)








レビュー:カリラ 2005 12yo 雨が降ってきたが・・・

Caol ila 2005 12yo by Gordon & Macphail(信濃屋セレクトのゴードンマクファイルからカリラ2005 12年熟成)を飲んだ。84点。
カリラ、と発音するこのお酒は、Caol=海峡、ila=アイラ島、というゲール語。アイラ島の海峡を意味し、実際にカリラ蒸留所は、アイラ島と隣のジュラ島との海峡に面している。
海の近くで作られたウィスキーには、海のフレーバーがつく。本当のところ、原理はよくわかっていないらしいのだが、どうでもいいと思う。味わってみればいい。

さて、このボトルはどんな味わいだろうか。

カリラ2005蒸留12年熟成 G&M

【評価】
グラスを傾け鼻に近づけると、コンクリートの護岸に荒々しく打ち付ける波。雨が降ってきたが、赤々と燃え続ける一斗缶の炎。ジャンパーのポケットに入ったグレープフルーツの玉。
香りを楽しんだ後、液体を少量そっと口に含む。屋内に入って、上手い人のピアノを聞く。窓ガラスに打ち続ける雨。ストーブの上のヤカンは湯気を激しく吹いている。
内省的な雨の日の無音の瞬間。

【Kawasaki Point】
84point

【基本データ】
銘柄:Caol ila(カリラ)
地域:Islay(アイラ島)
樽: Bourbon(バーボン)
ボトル:Gordon & Macphail(ゴードン&マクファイル)


ゴードンマクファイルの鹿が凛々しい


2005年熟成 そのころ何してましたか?

2016年瓶詰
護岸に荒々しく打ち付ける波


赤々と燃え続ける一斗缶の炎

内省的な雨の日の無音の瞬間


活字とウィスキーと空席

拙著『Japanese Whisky』が出版されてより、数か月間。いろいろな方と語り合う機会に恵まれました。それは私の「バー体験」をより豊かにしてくれるものでした。
その経験を言葉にして、数人の方とシェアしていました。万人向けではないけれど、バーが好きな方の中にすこし共感があれば嬉しいです。




活字とウィスキーと空席


活字は踊る
本の上で
ブログから飛び出して

もともとそれは
バーの暗いカウンターの上で
ひらひらと踊っていたのだけど

きらきらひかるグラスと
ウィスキーのあやしい液体に
すっかり魅せられてしまった!

活字たちは気持ちが高ぶって
多くの人に会いに行こう!と思ったのだ

・・・それはやがて、
フランスでInstagramにのっかり
スコットランドでNewsになり、
アメリカでRetweetされる

もとはといえば、活字たちは、
ただの言葉
それも、他愛のない言葉

あるかどうかもわからない、
バーで流れるジャズの、音と音のスキ間に消えてしまう、
そんな他愛もない言葉

翌朝には忘れ去られてしまうだろう、
その言葉たち


活字たちはもともと存在しない


この街で行き交う人々が
どんなに忙しそうで、
どんなに暗い顔をしても、
あるいは楽しいことがあっても、
笑い声が聞こえたとしても、
それらはまるで風のように透明で、
よく考えれば、ふたしかな存在


行き交う人々のなかの
ひとりの若者が、
バーの重たい扉を開ける
するとそこには空席がある

その空席は語りかける

透明な風のような若者に、
「座っていけよ」と

若者はついその気になり腰掛ける

その若者は空席を喜ぶ
バーテンダーや常連客もきっと、
若者が空席に出会えたことを、
微笑ましく思っていただろう

空席がひとつ消えたとき、
若者には居場所が与えられる

透明な空っぽのグラスには、
ウィスキーが注がれる

若者の透明なこころに生まれたことばたちは、
やがて活字となる


すべては、
このバーで生まれた言葉たち!


活字と、ウィスキーと、空席は、
ひととおりの、物語

活字と、ウィスキーと、空席は、
ひととおりの、感謝のことば

「活字と ウィスキーと 空席」は、
あしたもつづく、素敵ななにか




レポート:北海道ウィスキーフェス2018

2018年8月5日に開催された北海道ウイスキーフェス2018に行ってきた。
今年は北海道命名150年に当たる年であり、さまざまなイベントが開催されている。

開催が第一回のイベントとは思えない盛況ぶりだった。北国での開催が待ち望まれていたのかもしれない。国内のほとんどの蒸留所が参加していたし、インポーターや酒販の方も多かった。


時間のない方のために簡単にまとめてしまうと、「A. 原酒不足から既存蒸留所は品薄」「B. 意気込む新蒸留所(国内も国外も)」「C. ジンの強化」といったところだろうか。


A. 既存蒸留所はどこも「長熟は売っちゃいました」という感じで、「原酒不足ですみません」といったノリだ。新しいことは特に何もない。

B. 新規蒸留所の勢いは増している。国内外の蒸留所が我こそは!と名乗りを上げている。もともとウィスキーが好きで携わっている人が始めるパターンもあれば、日本酒や焼酎などのメーカーが参入する形もある。

C. これはAとも似ているが、熟成の必要がないジンを売り出す蒸留所が多い。あくまで本命はウィスキーだが、熟成している間に、世界的なジンブームに乗って稼ぎを確保し、名を売ろうという動きだ。


いくつか特筆すべきところをレポートする。

厚岸蒸留所

北海道の東に位置する厚岸(あっけし)蒸留所はまだ若い。この8月にニューボーン(ほぼ熟成していない原酒)の第二弾がリリースされるようで、すこしテイスティングした。

香りは、甘いナッツとドライイチジク。
口に含めばうすくペッパーが広がり、イチジクに説得力を持たせている。
熟成への期待が持てる。

厚岸は牡蠣でも有名。
いつかウィスキーとペアリングできる時が来るだろう。


顕著なイチジク香

LAKES レイクス

こちらも若い蒸留所。レイクス蒸留所は2014年オープン。The ONEはブレンデッドだ。こちらも少しテイスティング。

香りはスムース。だが必要な深みを有している。
口に含めば、う~んギリギリスコッチの矜持を保つ!

ブレンデッドで出荷量と味わいのバランスを保つ

ブレンデッドの隣にはジンも。面白さとみるか苦労とみるか。

COMPASS BOX

コンパスボックス『ノーネーム』。今年5月発売。もはや名づけが面倒になってしまったのか、「これだけの個性に名前なんかいりますか」という意味での名前らしい。かなりピーティですよ、との声かけ。
すこしだけテイスティング。

その香りは、小川のほとりの野いちご。
えいっ、と口に含む。拡張して行く煙、だがこのウィスキーは輪郭を保ったまま。スウィートなトーン。中心に残していく煙。


左の黒いラベルが「No Name」

かなりピーティだがスウィートだった


嘉之助蒸溜所

鹿児島の新しい蒸留所。KINOSUKEと読む。酒造メーカーが母体。ニューボーンをいただいた。写真は撮り忘れた。少し味見。

香は甘ったるい。
味わいはヘーゼルナッツ。チョコレート。

う~んいつかまたお会いする日があれば・・・。


紅櫻蒸留所

札幌の「いつかはウィスキーをつくりたい」と思っている、今はジンの蒸留所。BENIZAKURAと読む。
「スタンダード」をいただく。なかなかセンスあるボトルデザインだ。ボタニカルの一部に北海道産を使用。昆布なども。
香味の特徴はほぼない。少し柔らかいニューポット。昨今の多様化するジンの世界においてはボトルデザインに込められた1984の精神ほどの輝きは感じられない。

美しいボトルデザイン


Belgian OWL

ベルギー産ウィスキーのOWL=「フクロウ」。これも少し頂いた。

香りは、濃くて古い樽。
口当たりはスームスだが濃いコクがある。

フクロウは様々な国の神話的な鳥



GAIA FLOW 静岡蒸留所

新興系蒸留所のひとつガイアフロー。そろそろ若いウィスキーはリリースされるのでは。
「アンピーティッド」のサンプルをいただく。
香りは、誠実な木の香り。
ああ、飲んでも誠実。

つづけて「ピーティ」のサンプル。
香りは、焦がした酸味。
飲んでもやはり誠実な。

長熟を期待したくなるような、現時点で華やかさはないが質実剛健といった味わいであった。





KYRO キュロ 蒸留所

2014年蒸留開始のまだ若いフィンランドの蒸留所「キュロ蒸留所」。フィンランドといえばサウナ大国だが、サウナで仲間で集まっていた時に話が盛り上がってこの蒸留所ができたらしい。なんともフィンランドなお話!
この蒸留所の原酒が今回一番WOW!であった。繊細でかつ複雑、しかもシンプル。今ジンの世界に求めるものはここにあると思う。そしてまだ若いライウィスキーにも今後期待が持てる。

ジンの NAPUE ナプエ を頂く。
洗練された酸味のやわらかなジン。香りのバランスが秀逸!

ライウィスキーの ユーリ を頂く。
よりコクのある酸味だ。これは期待できる!

ツチキエルマ はニューポット。
これは最高!スモークがすこし香る。


まだ日本での正規の販売店が決まっていない状態と聞いた。なんともったいない!

美しいジン。これはうまい。

やや熟成したジン

ジントニックとして。ストレートで十分うまいのに。

サウナで思いついた5人の若者たち、らしい。


ツチキエルマ。うまい!

サウナの話は本当なのだろうか。
素敵だと思うけれど、日本だと
「座禅を組んでいるときにひらめいた」というような感じに近いのでは。
本当にそんなことがあるのだろうか。・・・そうであってほしい。


KOVAL蒸留所

アメリカはシカゴの新興系蒸留所。
Millet ミレット は、「キビ」、、そう「きび団子」の、あのキビを原料に使用したウィスキー。ライ麦から作ったのがらいウィスキーと呼ばれるので、キビウィスキーと呼んでいいだろう。攻めてる。
香りも味もアメリカン!ただ、やや柔らかい。

Four Grain フォーグレイン は、4つの穀物を使用。これはすごくおいしい。
アメリカンウィスキーがここまで複雑性を増してるとは!

キビでウィスキーとは!

この蒸留所の本気を見た一本「フォーグレイン」



最後にフィンランドのウィスキーを樽買いしたというバーの
プライベートカスク3年熟成を頂く。


以上、もちろん紹介しきれるものではないが、少しでも・・・雰囲気が伝わったならうれしい。
今宵もよいウィスキーライフを!