2014年8月14日木曜日

レポート:余市蒸溜所への訪問6 ~熟成編~

その5に続き、日本最北端のウィスキー工場、ニッカの余市蒸溜所への訪問をレポートする。
今回は「蒸留器編」につづき、ウィスキーづくりの最後のパートである「熟成」だ。

ウィスキーのもっとも神秘的なパートであり、多くの人を惹きつけてやまない魅力であり、最高の価値、それはウィスキーができるまでに費やされた「時間の価値」だ。ウィスキーは最短でも3年ほどの時間を費やす。長熟と呼ばれるウィスキーになれば20年以上の時間がこの「熟成」に費やされる。麦をあれこれする時間はほんの数日だから、ウィスキーづくりの99%以上は「時間をかけ待つ」ことに費やされているのだ。

時間が、樽の中の“その液体”に力を与え、何かを奪い、何かを足していく。それは日々、年々、おこなわれていく。短いほうが良いとも、長いほうが良いとも言い切れない。短すぎればトゲトゲしいかもしれない、長すぎてはパワーが足りないかもしれない。程よく短ければフレッシュで力強い、程よくながければ複雑なニュアンスを持ちながらも主張がはっきりしているだろう。それはウィスキー個別に違っており、とても複雑で、なにが正解とは言えない。若い時にさっぱりダメなウィスキーも、そのまま寝かしていれば、素晴らしい香味を放つかもしれない。樽に詰めた時点では、そのウィスキーの価値は決まらず、まだ勝負がわからない。生まれでは決まらない、人間に近しい酒と言えるかもしれない。だからウィスキーを飲むときには、そのウィスキーの費やしてきた年月に、思いを馳せずにはいられなくなる。
3月末の雪の残る余市蒸溜所

きれいな空。そしてきれいな空気。

並ぶ建物は、すべてウィスキー貯蔵庫だ。

鍵のかかった扉を開ける。一般非公開。
暗い空間にウィスキーが眠っているのだ。

土間(下は土)に木を敷いて、その上にウィスキーが眠る。

見上げると梁はこうなっている

木造であることが湿度に影響を与える
1987年、この年の余市はWWAでワールドベストを受賞している。
日本のウィスキーの素晴らしさが広まった歴史的年だ。 
木槌でポンポンっと。するとフタが開く

ノージングさせてもらった。素晴らしい香り!
余市の繊細さとスウィートさ、そして力強さが完璧なバランス

眠る樽

夏と冬で樽は呼吸をする。
夏は樽の中の息を吐き出し、冬は外の空気を取り込むのだ。
これが、余市のウィスキーは余市で眠らせなければならない理由。
余市の空気、気候、すべての影響を受けさせるからだ。

フタ。木と布。



土間にしているのも湿度を高く保つためと言われる

このなかに大量のウィスキーが眠っている

ここの空気を吸って余市のウィスキーは育っていく

 いかがだろうか。動きがなく、とても静かでゆったりとした時間が流れているのを感じていただけただろうか。ここまでの工程は、煙でいぶしたり、お湯でかき混ぜたり、アルコールを生み出したり、それをぐつぐつ煮て蒸留したり、非常にアクティブな時間だったが、この「熟成」というパートだけは違う。何が違うか?それは人間の手を離れていることだ。管理できる余地はほとんどなく、人間は長い時をかけて見守るという決心してそれを受け入れるしかない。
そしてその「時間」がウィスキーを神秘的で魅惑的な酒にさせる。

この「熟成編」でウィスキーづくりの工程の紹介は終わりだ。ウィスキー製造工場としての機能はほぼ紹介した。しかし、この蒸溜所訪問レポートはあと少しつづく。

この素晴らしい蒸溜所をつくったマッサンこと竹鶴政孝と、その妻リタとの思い出に触れない訳にはいかないだろう。「旧竹鶴邸編」へとつづく。









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